第6章 皇室典範と大日本帝國憲法(1)皇室典範講義(2)皇室典範の概要

さて、皇室典範の詳しい内容に入る前に、その概要についてあらかじめ知っておきましょう。


というのは、初めから細かい内容を知ろうとすると、かえってよく分からなくなったりすることが多いからなのです。


まずは、皇室典範とは何について書いてあるのか、をごく簡単に頭に入れて下さい。そして、このシリーズを読んでいてよく分からなくなった場合や、ある条文の意味がどうしても分からない場合は、もう一度この記事を読んでみて下さい。
そうすれば、皇室典範についての必須の知識について、自分なりには何とか理解できます。初めは、それでいいのです。


皇室典範は漢字片仮名書きで文語体であり、しかも難解な言葉も多く出てきますので、何らの予備知識なくいきなり読んでも、意味が分からないか、または誤解してしまいます。まずは、その概要を大雑把に知りましょう。何事でもそうですが、まずは全体像を大まかに知ることが、理解への近道です。


皇室典範は、以下の箇所と内容からなっています。まずは、これを頭に入れて下さい。



<皇室典範の概要>


御告文と皇室典範上諭 ・・・ 皇室典範の基本的な精神、理念が書かれています。


第1条 ・・・ 実に、劈頭の第1条こそが、この皇室典範の最も根幹の大切な条文なのです。


「大日本國皇位は祖宗の皇統にして男系の男子これを継承す」


これは、皇位継承についての不文の法を成文化したものです。つまり、皇位は悉く、男系男子を以って継承(相続)されてきたのであり、その例外は一例たりともない、というのが第1条なのです。


ここで、あれっと思われる方もいらっしゃるでしょう。皇位は男系を以って継承されてきた、というのは、歴史的事実であり、女系の天皇など(そもそも女系天皇などは天皇ではないですが)一例もない、というのは分かるのだが、女性の天皇は歴史的事実として確かにいらっしゃったのだから、男子で継承してきた、というのは事実に反するのではないか、という疑問が出てくると思われるのです。
これは、非常にもっともな疑問ですが、実はそうではないのです。これは、第1条の解説で詳しく述べたいと思います。


第2条 ~ 第9条 ・・・ 皇位継承の順番とその変更の場合の規定


第10条 ~ 第12条 ・・・ 践祚即位について。天皇が崩御された場合、皇室典範の第2条から第9条の規定により、直ちに儲君が践祚されます。


第13条 ~ 第18条 ・・・ 皇族が成年となる年齢についての規定や、敬称についての規定などです。


第19条 ~ 第29条 ・・・ 摂政を置く場合についての規定や、その順番などについての規定などです。


第30条 ~ 第44条 ・・・ 皇族についての一般的な規定です。敬称についてや、婚姻の場合の規定などです。


第45条 ~ 第48条 ・・・ 世傳御料や皇室経費についての規定です。


第49条 ~ 第54条 ・・・ 皇族が訴訟に関わられる場合などについての規定です。


第55条 ~ 第61条 ・・・ 皇族会議についての規定などです。


皇族会議とは、皇嗣の変更、摂政の選任、皇室典範の改正などについて決定する機関です。皇族会議は、成年男子の皇族全員と、それに加えて枢密院議長など五名の大臣によって構成されます。


第62条 ・・・ 皇室典範を改正する手続の規定です。皇室典範の改正には、帝國議会の議決は排除されています。皇族会議と枢密顧問の議によって、その改正が決定されます。


以上が、皇室典範に於いて定められている事柄です。これだけでも頭に入れておけば、皇室典範について大まかに、内容を理解できたといえます。