第6章 皇室典範と大日本帝國憲法(1)皇室典範講義(3)皇位は祖宗の皇統にして男系の男子これを継承す

さて、いよいよ、皇室典範の内容の解説に入ります。


第1条 皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス


第1条のこの条文こそは、皇室典範の最も根幹の条文であり、皇室典範の柱であり、全てである、と言っても過言ではありません。


この条文の意味するところを、伊藤博文(実質は井上毅)の『皇室典範義解』より引用してみましょう。


(以下引用)


皇統は男系に限り女系の所出に及ばざるは皇家の定法なり。上代独り女系を取らざるのみならず、神武天皇より崇峻天皇に至るまで三十二世、曾て女帝を立つるの例あらず。是れ以て上代既に不文の常典ありて易ふべからざるの家法を成したることを見るべし。其の後、推古天皇以来皇后皇女即位の例なきに非ざるも、当時の事情を推原するに、一時國に当り幼帝の歳長ずるを待ちて位を伝へたまはむとするの権宜に外ならず。之を要するに、祖宗の常憲に非ず。而して終に後世の模範となすべからざるなり。本條皇位の継承を以て男系の男子に限り、而して又第二十一條に於いて皇后皇女の摂政を掲ぐる者は、蓋し皆先王の遺意を紹述する者にして、苟も新例を創むるに非ざるなり。


(引用ここまで)(伊藤博文『憲法義解』(岩波文庫)p.128~129)


皇統の男系とは、父祖を辿っていけば神武天皇へ行きつくこと、を意味します。先祖の父方を辿れば神武天皇に行きつくことを、男系というのです。

畏れ多くも皇位の正統性とは、男系であることであり、これ以外にはありません。男系男子の皇族方は皆等しく、皇位を継承(相続)される正統性を有しておられます。但し、その即位にあたっては第2条以下で順位が定められておりますので、それに従わねばなりません。


井上毅によるこの条文の解説によれば、


皇統は男系に限り、女系を排除するのは「皇家の定法(皇室の不文の法)」である。そして、神武天皇より崇峻天皇に至るまで、三十二世にわたり、女性天皇も即位された例はなかった。これは、古代に於いて既に、女系天皇のみならず、女性天皇も即位を禁じるという不文の法が成立していたと見られる。
推古天皇以降、女性天皇が即位した例はあるが、これは当時の事情を考えると、幼い儲君の成長するのを待ってこれに皇位を継承させようとする為の便宜的なものに過ぎず、女性天皇の即位を皇位継承についての不文の法とみなすことができるとはいえないのである。
この第1条が皇位継承につき男系男子の継承を定めるのは、皇祖皇宗より受け継いだ不文の法を成文化したものに過ぎず、新たな制度を創設した(新たに女性天皇を禁じた)のではない。


と述べられています。


つまり、女性天皇はいわゆる中天皇(なかつすめらみこと)であって、男系男子の儲君(皇位継承者)が直ちに践祚できない場合に於いて、中継ぎとして仮に即位されたものに過ぎない、というわけです。


女性天皇は、八名十代の方々がいらっしゃいました。推古天皇、持統天皇、皇極天皇(重祚して斉明天皇)、元明天皇、元正天皇、孝謙天皇(重祚して称徳天皇)、明正天皇、後桜町天皇、の方々であらせられます。


次回の記事では、これらの天皇の践祚された例を検討し、「女性天皇とは男系男子の儲君が皇位継承をするまでの、中継ぎの役割として即位されたに過ぎなかった」ということを確認してみたいと思います。