第2章 偏見(経験)(11)日本人とは何か

さて、これまで述べてきたことを敷衍し、まとめる意味も兼ねて、「そもそも日本人とは何か」についてごく簡単ではあるが、述べてみたい。すなわち、「日本人とはどのような人々のことなのか」「日本人の定義」について述べるのである。

我が國は世界に於いて独自の國體を有するものではあるが、そうであっても、他国との何らかの関わりは、我が國もまた国際社会の一員たる以上は避けられないことである。諸国の間に伍し、この独立を保持していくには、「日本人とは何か」についての憲法学からの考究が不可欠である。

以下、日本人とは何か、について簡略かつ明快に論じていきたい。ご一読をお願い申し上げます。



(1)國家の三要素


我が國は、数千年の歴史を有する世界最古の國家である。万世一系の皇室を戴く天壌無窮の國體については、これまで何度も随所で触れてきたので、ここで詳述することは控えたい。

そして、國民という概念もまた、我が國のそのような性質に鑑みれば、現在生存している國民のみならず、過去の國民(父祖)、そしてこれから生まれ出ずる将来の國民(子孫)をも含むのである。すなわち、國民とは、父祖から現在、そして子孫に至る、過去、現在、未来の國民である。

かつて我々の父祖はこの日本という國に於いて、各々その働きをなし、日本國を形成し発展させる一翼を担ってきた。我々の父祖は、天皇を中心として皇族、公家、武士、平民らが各々その分を守りつつ、有名無名に一切関わりなく、意図するや否やに関わりなく、我が國の形成を担い、道徳や慣習、伝統などの生成に寄与してきたのである。

かくして、國民とは現在の國民のみならず、父祖と子孫を含むものであり、國家とは①國土、②過去、現在、未来の國民、③父祖から相続してきた道徳や慣習、伝統などの三要素の総体を表すものと定義できるのである。



(2)血統の相続(世襲)の法理


さて、現在に生きる我々もまた、日本人の一員として、その役割の大小はあれ、この悠遠なる営みに参加している。我々は父祖よりこの日本國を相続し、この悠遠なる営みに参加し、これを子孫へと継承する。

父祖から相続した道徳や慣習、伝統などは、我々が日本人たる所以である。我々はこれを相続し、子孫へと継承するのである。父祖から相続したものは、これにとどまらず、國土も含まれる。

このように考えてくると、國家とは父祖から相続したものであって、現在の我々はこれを子孫へと継承する責務を負うものである、ということが理解できよう。

従って、日本国を相続し得る者(日本人)とは、父祖が日本人たる者に限定される、といえる。何故ならば、日本國がかかる歴史的な連続性を有する國家である以上、それを相続し得る資格を有するのは、必然的にその子孫に限定されるからである。全くの別の民族が、いきなり日本人たる資格を相続することはできない。これを、血統の相続(世襲)の法理と呼ぼう。

すなわち、日本人とは、父祖が日本人たる者のことであり、つまり、父祖より日本人たる血統を相続した者のことである、と定義できるのである。



(3)結語


今回は非常に簡略に過ぎるとのご意見もあろうと思いつつも、「日本人とは何か」を端的かつ直截に述べてみたが、これは保守思想憲法学の観点から必然的に導き出される結論である。

日本人とは、父祖より日本人たる血統を相続(世襲)した者のことであり、それ以上でもそれ以下でもない。相続(世襲)こそは、保守思想の最重要の要素であり、我々の脆弱な理性の及ばないものである。

1、國民とは、現在の我々のみならず、過去(父祖)と将来(子孫)の國民をも含むものである。

2、國家とは、①1、の國民、②父祖より相続(世襲)した國土、③父祖より相続(世襲)した道徳や慣習、伝統など、の三要素から成る。

3、日本人とは、日本人たる血統を父祖より相続(世襲)した者のことである。

このテーマについては、今後も引き続き採り上げていく。